さかい医院。川崎市中原区の内科・循環器科診療所。武蔵小杉駅より徒歩8分。生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病)、心臓病(虚血性心疾患、不整脈)。

虚血性心疾患とは

心臓の筋肉への血液の供給が減ることや途絶えることを虚血(きょけつ)といいます。狭心症と心筋梗塞の2つをまとめて虚血性心疾患と呼んでいます。

狭心症と心筋梗塞は大きく違う

どちらも心筋への血流(酸素不足)が途絶えますが、狭心症では一時的であり回復します。一方で心筋梗塞は血管が完全に閉塞し、血流が途絶えるため、心筋が 壊死 ( えし ) (死滅)をするため回復せずに心臓に大きな障害が残ります。

 

次のように大きく違います。

  • 狭心症 ⇒ 心臓の筋肉は生きている
  • 心筋梗塞 ⇒ 血流が途絶えた部分の心臓の筋肉は生きていない

 

狭心症と心筋梗塞の起こる原因は?

狭心症は心臓の血流(=酸素)が不足し、心筋梗塞は心臓の血流が途絶することにより起こります。

心臓に酸素と栄養を供給している血管を冠動脈と呼び、左に2本(前にある左前下行枝と横にある左回旋枝)、右に1本(右冠動脈)大きなものがあります。

冠動脈の動脈硬化が進み、血管が次第に狭くなると運動時に心筋へ血液が十分送られなくなるため、心臓が酸素不足の状態に陥ります。これを虚血性心疾患と呼び、狭心症と心筋梗塞がその代表的なものです。

このように冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による器質的狭窄(物理的に中が狭くなる)による労作性狭心症が多いのですが、冠動脈の一時的なけいれん(痙攣)(攣縮)でも心臓は酸素不足となることがあります。日本人の狭心症では攣縮の関与が欧米に比し多いとされています。

虚血性心疾患の症状

痛みを感じる場所は、胸の中央、左胸部、左肩、首、下あご、みぞおちなどです。胸痛が肩から腕などへ広がる(放散)こともあります。痛みの続く時間 狭心症は数分から10分くらいです。心筋梗塞は狭心症よりも長く、数時間続くことが多いです。

痛みの性質は締めつけられるような、抑えつけられるような、重苦しいといった漠然とした痛みであることが特徴です。胸やけ、肩凝り、歯痛などが主な症状のこともあります。狭心症では痛みの部位は明確でなく、手を胸全体にあてて痛みを表現することが多いようです。

虚血性心疾患の検査

虚血性心疾患の診断を確実にし、治療方針を決める上で、心電図検査、運動負荷心電図、ホルター心電図、血液検査、心臓超音波検査などを行う必要があります。設備の整っている大きな病院では心筋シンチグラフィーや 冠動脈造影・ 左室造影を行うことも可能です。

最終的には、腕・手首・足の動脈から挿入した管(カテーテル)から冠動脈に造影剤を注入する冠動脈造影は、どこが狭窄しているのか、どの程度狭くなっているかを知るために行います。それらの検査は狭心症の診断を確実にし、治療方針を立てる上で大変役立ちます。術者・器具の進歩がめざましく、以前と比較して非常に安全に行うことが可能となっております。

経皮的冠動脈形成術の写真

急性心筋梗塞(前壁中隔梗塞)で冠動脈造影検査

治療前 治療後
CAGLADpre CAGLADpost
左前下行枝の完全閉塞 治療後は血流が再開

 

狭心症:前下行枝の狭窄に対して経皮的冠動脈形成術(PCI)

LADPCI.jpg

左:治療前の狭窄

中央:経皮的冠動脈形成術(PCI)

右:治療後

⇒:治療した部分

虚血性心疾患の治療目的

狭心症の患者さんは日常生活が大きく制約されます。治療の目的は、まず発作を予防し運動能力を向上させ、生活の自由度を高めることにあります。また、狭心症をきちんと治療・管理しないと突然心筋梗塞を起こして命を落とすことにもなりかねません。

心筋梗塞ヘの移行を防ぐことも治療の大きな目的です。治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本になりますが、より積極的な治療法としてバルーン等を用いて冠動脈の狭窄部位を拡張したり、バイパスをつくったり、といった血行再建療法を実施することもあります。

治療方法:生活習慣の改善

ほとんど冠動脈の動脈硬化が原因となって起こるため、虚血性心疾患の予防はすなわち動脈硬化を予防することです。動脈硬化は年齢とともに進みますが、促進する要因を危険因子(リスクファクター)と呼びます。

危険因子には、様々な因子がありますが高血圧、高コレステロール血症(脂質代謝異常)、喫煙、糖尿病、高尿酸血症、肥満、ストレス、運動不足など修正やコントロールが可能であり特に重視されています。その他、修正不可能な危険因子としては男性、加齢、家族歴などがあります。これらの因子を持った人は生活習慣の改善に留意し、危険因子を減らすよう努カする必要があります。

高コレステロール血症、高血圧、喫煙はそれぞれ単独でも虚血性心疾患の危険因子として重要ですが、危険因子は1つよりも2つ、3つと重なるほど危険度が増していきます。

適度な運動は全身を使った軽い運動が最適です(歩行、速歩、自転車等)。天候や体調が悪い時、食後などは禁物です。狭心症発作がたびたび起こる時や心筋梗塞の発作直後は禁止です。

虚血性心疾患にかからないために、また、すでにかかってしまっている人は これ以上病気を進行させないで病気と上手に付き合うためにも、可能な限り危険因子を取り除くことが大切です。

治療方法:薬物療法と血行再建療法(経皮的冠動脈形成術(PCI)、冠動脈バイパス術)

このような日常生活の改善によっても是正されない場合に降圧薬、抗高脂血症薬、血糖降下薬など薬剤による治療が必要になります。

 

薬物療法が効果不十分ならばバルーン・ステントなど積極的な治療が必要となります。

また、すでに狭心症あるいは心筋梗塞を発症している人には、これらに加えて抗狭心症薬、抗凝固薬や抗血小板薬、血栓溶解薬などが投与されます。そして、薬剤による内科治療の効果が不十分なときには、上記同様にバルーンカテーテルによる冠動脈形成術(PTCA)や冠動脈バイパス術(CABS)などの観血的治療法が必要になります。

 

※危険因子が残る限りバイパス手術などは威力半減

これらの治療は非常に有効なものですが、危険因子が是正されない限りその治療効果が不十分となり、動脈硬化が進行して再発を繰り返すことにもなりかねません。日ごろから意識して危険因子の是正に努めることが重要であることを覚えておいていだだきたいと思います。

虚血性心疾患の予防のポイント

  1. 食べ過ぎず、肥満に注意する。
  2. 薄味を心がけ、塩分の取り過ぎに気をつける。
  3. バランスのよい食事をし、糖分、脂肪分のとり過ぎを避ける。
  4. 喫煙、大量飲酒をやめる。
  5. 適切な運動を心がける。
  6. 寝不足、過労を避け、規則正しい生活を送る。
  7. 焦らず、怒らず、あわてず、ゆとりを持って生活する。
  8. 家族に心筋梗塞にかかった人がいれば、特に生活習慣に注意する。
  9. 高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の早期発見のため、定期検診を受ける。
  10. 運動時に胸部圧迫などの異常を感じたら、すぐ病院に行く。

以上の10項目を守ることが大切です。

虚血性心疾患で違うところの痛みや違う症状が出ることがある

狭心症発作時の症状は患者さんによって異なり、右胸に痛みを感じる場合もあり、非常に多彩です。それだけに心臓の病気と思わない患者さんも多く、自己判断は禁物です。

特に糖尿病の患者さんでは神経障害により痛みのない虚血発作(無痛性心筋虚血)や、心筋梗塞になっても全く痛みがなく軽い息切れ程度の症状の場合(無痛性心筋梗塞)がありますので注意が必要です。

 

狭心症のタイプ

狭心症は、どのような状況で起こったかによる誘因別の分類法にしたがえば、動作や精神的ストレスで誘発される労作狭心症と、夜中から明け方にかけた睡眠中や安静時に生じる安静狭心症に分けられます。

一方、心筋梗塞に移行する危険度からみると、初めて狭心症の発作が出現してから3週問以内の新しい狭心症(労作および安静狭心症)、それに胸痛発作の回数、強さ、持続期間が増加し発作が起こりやすくなったものは不安定狭心症と呼び、心筋梗塞に移行しやすい狭心症として重視します。